短編小説 魔道書

第4話 金木犀の召喚

今年もあの季節がやってきた。 秋はハロウィンなどがあるが、それではない。 あの香りを求めて―

きゅっと寒くなったら、あの甘い香りがする。 この季節が好き。寒い方が私が私でいられる。自分自身を思い出させてくれる。 でも、金木犀を見る時はいつも1人。 学生時代も今も1人。 友達がたくさんいても、何故かこの香りで思い出すのは、1人でいる時の自分。 それでも、自分には存在価値があると奮い立たせてくれる。

歩いていると風が感じる。 目の前に何も見えないのに。 当たり前だろうと思うかもしれない。 でも、何もないのに感じることが出来るなんてすごいことかもしれない。 何か見えない力が働いていると思ったって不思議じゃない。 そして、香りも同じことが言えるかもしれない。 目には見えないけど感じるもの。 こんなに目に見えないものがあるのに誰も怖くはならないだろうか。私なんか幽霊なんかより怖く感じる。 でも、なんかそれは尊く感じる。

てくてく歩いているとあの香りがした。 そう、金木犀である。 やっと見つけた。 本当に少なくなってしまった。 花が落ちるからだろうか。 橙のじゅうたんのように花が落ちる。 それでも、あの甘い香りがすると落ち着く。

金木犀が香る季節に合戦があったからそれと重ねてしまうのかもしれない。

今年も生きることが出来たんだな。


※この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。

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あとがき

金木犀の季節がやってきた。 金木犀の話を書きたかった。 また、あの香りを思い出すために。 2019年10月29日(火)

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